天竺はどこだ!?「西遊記」の最終回アラカルト

 

 「西遊記」好きの人たちでも、過去にテレビ放送された数々の「西遊記」ドラマの最終回がどうなったかを覚えている人は少ないのではないのでしょうか。ここでは、三蔵一行が目指した天竺とは一体どんなものだったかをまとめてご紹介いたします。
 あくまで原典「西遊記」を原作とする日本製のテレビドラマのみとし、スピンオフのマンガなどを忠実にアニメ化した作品とか、目的が天竺行きじゃない話は除外しています。よって、私が選んだのは、以下の五作品のみです。


「悟空の大冒険」(1967年・フジテレビ)

  三蔵一行が、ようやく天竺らしき場所にまでやって来ますと、そこには天竺を目指していた旅人たちがおおぜい集まっていました。全員で、入場料を払って、天 竺の門と言われる場所をくぐり抜けますと、そこには旅人たちから巻き上げた財産でつくった黄金の塔が建っていました。ここは、本物の天竺ではなく、天竺人 気につけ込んで、悪党が開設したニセ天竺だったのです。この悪の天竺を滅ぼして、再び天竺への旅を再開した三蔵一行は、謎の老人が天竺だと呼んでいる場所 にまでたどり着きますが、そこは何もない岩地でした。謎の老人がお釈迦様の正体を現して、天竺の真実を話します。天竺なんて場所は最初から存在しなくて、 悟空たちが悪者を退治して、平和になった今までの道のりこそが、お釈迦様が考えていた平和の国、天竺だったのでした。
 このアニメは、もっとも古い「西遊記」ものに属しますが、その内容は、後の多くの「西遊記」クリエーターたちに影響を与えたのか、この最終回のさまざまなアイディアが、のちの「西遊記」ドラマの最終回からも見出す事ができます。


「飛べ!孫悟空」(1977年・TBS)

この作品の最終回については、こちらをご覧下さい。


堺正章・夏目雅子版「西遊記」(1978年・日本テレビ)

  三蔵一行も、いよいよ、天竺のそばまでやって来たかと思われましたが、三蔵を天竺に行かせまいとする悪い妖怪たちも、ついに総攻撃をしかけてきました。鉄 砂大王(鉄鎖大王?)と冥府大王を大将とする妖怪軍団は悟空によって退けられますが、ようやく三蔵一行がたどり着いた天竺・大雷音寺は、鉄砂大王が仕掛け たニセモノでした。そこで、白紙の経典を三蔵に渡して、唐へ帰還させる事で、三蔵の旅を全て台無しにしようと言う策略だったのです。八戒の妹が妖怪仲間を 裏切って、全ての真相を教えてくれた事で、この危機も何とか乗り切りますが、はたして、いつになったら、本物の天竺にたどり着けるのでしょう?
  この疑問に答えてくれる為に、釈迦如来が、現在の三蔵一行の居場所をビジュアル的に教えてくれますが、まだまだ天竺まではちょうど中間地点ぐらいだったの でした。と言う事は、翌年放送された本「西遊記」のパート2の最終回でこそ、本物の天竺に到着できるのでは、と期待も高まるところですが、このパート2の 最終回は、死んだばかりの三蔵の母が、幽霊になって三蔵に会いにくると言うストーリーで、天竺については一言も触れられませんでした。残念ながら、パート 3は制作されませんでしたので、この堺正章・夏目雅子版「西遊記」は天竺未到着の未完のままで終わっています。
 なお、三蔵が大雷音寺で白紙の経典を渡されるのは原作どおりのエピソードで、なんと、本物の大雷音寺が、非理解から、こんな真っ白けの経典を三蔵たちに突き付けたのでした。


唐沢寿明・牧瀬里穂版「西遊記」(1994年・日本テレビ)

  宿敵・提婆達多との抗争にも決着がつき、三蔵一行もあとは天竺に到着するのみとなりましたが、待ち望んでいた天竺は、すでに荒廃しきっており、大雷音寺も 廃墟と化していました。長かった旅の目的は、とうの昔に無くなっていたのです。この唐沢寿明・牧瀬里穂版「西遊記」では、提婆達多ひきいる巨大妖怪組織は 存在しても、神仙のたぐいはまるで登場しませんので(悟空の過去の冒険でさえ、悟空と激突したのは、釈迦如来ではなく、古き日の提婆達多)、文字通りの神 も仏もない世界だった事になります。
 天竺のこんな有様にヤケをおこして、いったんはチームを解消してしまった三蔵一行ですが、大雷音寺の生き残りが存在していて、近所の洞窟で写本づくりを行なっていると言う話を聞き、再び希望を取り戻すと、チームを再結成し、その写本を受け取りに出発するのでした。


香取慎吾・深津絵里版「西遊記」(2006年・フジテレビ)

 近作ゆえ、皆、知ってると思うので、あまり書きたくはないのですが。(苦笑
  天竺の大雷音寺は確かに存在しましたが、そこで作られる経典は高僧の命を犠牲にして誕生するものであり、三蔵が求める経典も、三蔵自身が己の身を差し出し て完成させろと言う命令がくだります。最初こそ、その運命を受け入れようとした三蔵法師でしたが、愛弟子たちの必死の延命懇願を見ているうち、考え方が変 わります。とうとう、経典になるのを止めて、弟子たちとともに、大雷音寺から逃げ出してしまった三蔵法師ですが、そんな彼らの元に姿を現わしたのは釈迦如 来で、大雷音寺を裏切った罰として、山ほどある経典を預けて、その普及に務めよと、三蔵たちにとっては嬉しい判決を下してくれたのでした。
 でも、本作の三蔵法師って、馬に乗らないんですけど、こんなにいっぱいの経典、どうやって唐まで持ち帰ったんでしょうね?


<おまけ・「西遊記」5人めのメンバー>

  原作「西遊記」でも、三蔵が乗っている白馬は、竜の化身で、いよいよ一行がピンチの時は、自ら立ち上がって三蔵を守ったりもしているのですが、そのへんの 原作とは関係なく、脚色されたドラマ版「西遊記」には、たいがい三蔵、悟空、八戒、悟浄以外の5人めの仲間が登場します。その典型が「飛べ!孫悟空」の加 トちゃんで、登場理由は、「西遊記」のメンバーは4人で、ドリフのメンバーは5人だから、と言う楽屋オチだったりします。
 原作にかなり忠実なの が、堺正章・夏目雅子版「西遊記」のパート2でして、三蔵の白馬が玉龍という男に頻繁に変身します。(ただし、竜としての前世の記憶は皆無で、ほとんど頼 りにならない存在なのですが)唐沢寿明・牧瀬里穂版「西遊記」は、さらにその変形として、提婆達多の部下だった白竜が、恩義のある三蔵法師の為に乗馬に化 身して、忠誠を尽くすと言う設定になっています。
 アニメ「悟空の大冒険」は、子供向けに可愛らしい女の子キャラを一人と言う配慮だったのか、竜 子という仙術使いの女の子が、悟空の事を気にしながら、三蔵一行につきまとうのですが、この設定をしっかり拝借したのではないかと思われるのが、香取慎 吾・深津絵里版「西遊記」でして、こちらにも、悟空に気のある妖怪娘・凛凛が出てきます。「悟空の大冒険」のパイロット版では、竜子は悟空の事を自分の花 婿候補に見立てており、より凛凛に近い設定のキャラだった事が分かります。

前のページに戻る