テンペラー星人激伝 |
テンペラー星人のデザイン画に「エンペラー星人」と書かれていた事からも、最初、「ウルトラマンタロウ」の第33話・第34話に出てくるはずだった大物ゲスト怪獣(宇宙人)が、第25話にて名前のみ触れられたエンペラ星人だったらしい事はうっすらと推察できる話である。それが、なぜ、放送作品では「エンペラ」ならぬ「テンペラー」になってしまったのか、その秘話については、どこにも語られていない。まさか、手書きの「エ」の字が「テ」と誤植されてしまい、そのまま通ってしまった訳でもないだろう。一説では、テンペラーとは、「天皇」と「エンペラー」を組み合わせた造語だとも言われている。だとすれば、テンペラー星人は「エンペラ」星人よりもさらに強大な宇宙人と言う想定上で、ウルトラマンタロウに登場した事にもなる。
もっとも、昨今のウルトラ怪獣の裏設定では、むしろ、逆さまで、テンペラー星人の方がエンペラ星人の一の子分だったと言う考え方の方が通説として知れ渡っているようである。そして、ウルトラ宇宙興亡史に照らし合わせてみても、そのように考えた方が無難なのである。
エンペラ星人は、大昔、怪獣軍団を率いて、ウルトラの国に攻め込んだ大ボス宇宙人であった。ウルトラ一族に反発する対抗勢力の頂点だったのだとも考えられるだろう。しかし、二大権力の衝突は、ウルトラ一族の勝利によって、いったんは幕を閉じる事となった。エンペラ星人が、種族として何人も存在したのか、あるいは、唯一単体の帝王(エンペラ)生物だったのかは分からない。しかし、これほどのウルトラ一族の宿敵にも関わらず、以後はエンペラ星人がまるで姿を見せなくなった事を考慮すると、この大昔の戦いにおいて、エンペラ星人は再起不能なほどに打倒されてしまったらしい。そして、そういう風に考えてあげないと、この大昔の戦いでエンペラ星人軍団相手に命を賭けてウルトラの国を守り抜いたウルトラの父も報われないのである。
このエンペラ星人の破滅によって、大切な引率者を失った反ウルトラ勢力の悪宇宙人や凶悪怪獣たちは宇宙各地に四散する事になった。それでも、過去の強大なエンペラ軍団の指揮管制の復活を望む者たちは、おのずと、かつてのエンペラ星人の筆頭側近のもとに寄りすがる事となった。その筆頭側近こそが、テンペラー星人だったのだ。エンペラ星人なき時代に、テンペラー星人が「怪獣軍団のゴッドファーザー」と呼ばれていた所以も、これで納得がいくようになるのである。
そのテンペラー星人自身も、主君の仇であるウルトラ一族の事を、赤穂浪士さながらにしつこくつけ狙っていた訳で、バット星人、ヤプール、ヒッポリト星人などの同胞たちがふがいなくウルトラ戦士に破れていったのを見かねて、ついに「ウルトラマンタロウ」中盤エピソードにおいて、自らがウルトラ一族壊滅の為に乗りだしてゆく事になるのである。このテンペラー星人登場の前後編のエピソードは、ウルトラ戦史上でも、まさに重要な戦いであったのだ。
このテンペラー星人戦線は、結果的にはテンペラー陣営の惨敗であり、ウルトラ戦士を一人も殺していない事から、テンペラー星人はそれほど強くはないようにも見られがちだが、そのような要素的な判断はあまり正しくはない。ウルトラ戦士を殺せたかどうかも、あくまで結果の話なのであり、殺した事だけを強さの基準にすれば、円盤生物ブニョもゼットンやバードンと同格だという事になってしまう。殺しはしなくても、テンペラー星人はタイマンの勝負でタロウを二度も圧倒している。当時のタロウは、すでにバードンやメフィラス星人にも勝っている相当な実力者だったにも関わらずだ。ブニョやヒッポリト星人のような卑怯な手段や奇襲を用いなくても、正面勝負でもウルトラ戦士を倒す事ができる。その事こそが、テンペラー星人が真の最強宇宙人である証しなのだ。
しかし、怪獣軍団のゴッドファーザーだったテンペラー星人の正当評価は、その強さだけですまされるものではない。対ウルトラ兄弟作戦もかなり練り上げられたものであり、テンペラーのウルトラ戦士抹殺計画を分析する為には、まず先に、先行してウルトラ戦士と戦った悪宇宙人たちの作戦と比較検証しておく必要がある。
・ガッツ星人
最初に、ウルトラ戦士の一人を捕獲するまで追い詰めた宇宙人である。その作戦は実に巧妙で用意周到であり、おとり怪獣アロンや分身術を駆使する事で、自分たちの被害は最小限におさえて、ウルトラセブンのエネルギーを出し切らせ、セブンを完全ダウンにまで追いやった。彼らの作戦は、何もかもが計画どおりに進んでいたが、唯一、地球人(ウルトラ警備隊)の事を見くびっていた事がアダとなった。予測以上の活躍ぶりを見せたウルトラ警備隊は、倒したはずのセブンを事もあろうか復活させてしまうのである。司令母艦をセブンに直撃されたガッツ星人は、今さら分身や怪獣でセブンの目をそらす訳にもいかず、そのまま撃沈されてしまうのである。
・ナックル星人
ガッツ星人をさらに上回るウルトラマン分析と、大量の怪獣を計画に投入し、それでも足りないとばかりに、新マンの人間体の関係者(坂田兄妹)を殺害し、新マンの平常心が乱れた状態の時に攻撃を仕掛けて、徹底的に新マンを叩きのめした。この極度な念の入れようは、肝心のナックル星人自身が戦闘能力が低かったがゆえの己への心配の現われだったのだろう。さらに、ナックル星人は、地球人(MAT)への警戒も怠らない。新マンの処刑は、地球人の手が届かない自分の母星で行なう事とし、同時進行で、侵略船団も地球へ送り込んで、MATが余計な行動をとれないように追い立てた。ほとんど完璧だったナックル星人の作戦は、「他のウルトラ戦士の出現」によって全てが台無しになってしまう。3人も強大なウルトラ戦士が揃ってしまうと、ナックル星人程度の実力だと、まるで歯が立たなかったのだ。母星をウルトラマンとセブンに奇襲され、処刑直前の新マンを奪回された上に、地球に到着寸前だった侵略船団も壊滅させられてしまう。切り札の怪獣ブラックキングも、新マンの新技スライスハンドで斬殺される。ブラックキングは、あくまで知ってる技しか対処できないという致命的な欠点があったのである。予想外のウルトラ戦士の出現もナックル星人の敗因要素の一つかもしれないが、他方で、基本的な戦闘力がウルトラ戦士よりも下回っていた事も最後の詰めで巻き返せなかった原因だと言えるだろう。
・ヤプール in ゴルゴダ星
ウルトラ兄弟の存在に脅威を感じたヤプールは、いっきに彼らを葬り去る作戦に出る。それが、自分たちのテリトリー・ゴルゴダ星にウルトラ兄弟を全員連れ込み、そこですぐに抹殺してしまうというものだ。ナックル星人の二の舞いを踏むまいとした、実に優れた計画だ。そして、それを実行できるほどの戦力もヤプールは十分に持ち合わせていたのである。ウルトラ兄弟をゴルゴダ星にまで誘い出したのはいいが、土壇場でエース一人に逃げられてしまう。しかし、実力のあるヤプールは、その程度のミスでは、まるで動じたりはしない。地球には超獣バラバを送り込むし、ゴルゴダ星では人質となったウルトラ兄弟を利用して、エースキラーを作り上げ、エースの逆襲を返り討ちにする準備を整える。一方で、地球人(TAC)がゴルゴダ星破壊計画を進めているが、それすらも計算範囲内であり、地球人がゴルゴダ星を爆破してくれたら、それでもウルトラ兄弟は全滅するので、ヤプールの望むところなのである。ヤプール唯一の誤算は、ウルトラ兄弟の能力を甘く見た事にあった。ウルトラ兄弟の秘められた力はエースに必殺光線スペースQを与え、彼らに逆転のチャンスをもたらしてしまった。捕らえたウルトラ兄弟は人質なぞにせず、さっさと殺すべきだったのである。この最高のウルトラ兄弟抹殺の機会を逃したヤプールは、のちに自分の方が全滅のピンチに追い込まれてしまう羽目になるのである。
・ヒッポリト星人
過去の宇宙人たちのウルトラ兄弟抹殺の敗因のデータは出揃った。捕らえたウルトラ一族は、躊躇なく次々に殺すべし!それを実行に移したヒッポリト星人は、ウルトラマン史上もっとも多くのウルトラ一族を殺した宇宙人(怪獣)の栄誉を手にする事となった。と言うか、肉弾戦が不得手なヒッポリト星人としては、ヒッポリト・タールによる奇襲でいっきに相手を倒す以外、確実に勝てる手段が無かったのである。強敵ヤプールの壊滅直後の安心感で、エースをはじめとしたウルトラ兄弟たちが少々気が緩んでいたのも、ヒッポリト星人にとっては好都合となった。ヒッポリト・タールによる奇襲作戦は、瞬く間にウルトラ兄弟を全滅させてしまったのである。正確には、仮死状態だったらしいが、ヤプールでさえ全員捕獲には失敗しているのだから、まさに大金星である。地球人(TAC)の力ではタール状態は解除できないので、TACの存在も恐るるに足らずなのだ。唯一の想定外だった「ウルトラの父の出現」も、急いで地球に飛来した為、ウルトラの父のエネルギーがほとんど残っていなかったという幸運で、その事自体は、ヒッポリト星人に何の不利ももたらさなかった。ヒッポリト星人は、とうとうウルトラの父まで倒してしまったのだ。死ぬ直前のウルトラの父がエースのタール状態を解除してしまった事だけが、ヒッポリト星人にとっての手痛い敗因となった。一度ヒッポリト・タールに苦汁を呑まされたエースは、二度と同じ手には引っ掛からない。なおかつ、肉弾戦では明らかにエースに劣っているヒッポリト星人は、そのまま負けペースに引きずり込まれてしまい、ウルトラ兄弟を全滅させた殊勲者とは思えないほど情けない最後を迎えるのである。たとえ、一度はウルトラ戦士を倒しても、まだ油断は禁物なのだ。仮に、ウルトラ戦士が復活してしまっても、余裕で迎え撃てるほどの基本的実力が無ければ、ウルトラ戦士にはまだまだ勝つ事はできないのである。ガッツ星人やナックル星人の敗北から学ぶべし。
・一人めのテンペラー星人
ついに、テンペラー星人の出撃である。しかし、地球に現われた一人めのテンペラー星人はおとりに過ぎなかった。怪獣アロンや再生ベムスターなどに相当する役割である。ところが、おとりの割には、このテンペラー星人はやたらと強いのだ。タロウを二度撃退し、あわやZATも全滅しかける。テンペラー星人の基本的実力の前には、事前分析も緻密な計画も必要なく、単体のウルトラ戦士ならば簡単に倒す事ができた。強靱な体はタロウのストリウム光線も受け付けない。ビーム・ロッドの一撃はたちまちタロウのスタミナを奪ってしまうし、ごつい図体は格闘戦にも向いている。しかし、それほど強くても、おとりなのだ。このテンペラー星人の目的は、地球に本当にウルトラ兄弟が勢揃いしているかどうかを確認する事にあった。だから、その確認が済むまでは、秘密兵器のウルトラ兄弟必殺光線の使用は許されない。それでも、タロウはこのテンペラー星人に二連敗しているのだ。
この時のタロウは、そばに兄弟がいた為、甘えて全力を出してなかったのではないかという説も聞かれるが、本編を見た限りでは、それは正しくない。むしろ、兄弟たちに一人で戦うように煽られるわ、テンペラー星人には弱虫の甘えん坊よばわりされるわで、ムキになって、なおさら総力で戦っていたのではないかと思われるのだ。それでも、タロウは一方的にテンペラー星人に叩きのめされていたのである。
タロウがこのテンペラー星人に勝てる方法は奇襲攻撃のみであった。柔らかいテンペラー星人内部に突入して、中からテンペラー星人を爆破するという捨て身殺法である。テンペラー星人側から見れば、とんでもない卑怯な戦い方にも見えた事であろう。それでも、タロウが勝った事には変わりはない。結果的に、タロウのこの攻撃でこのテンペラー星人は戦死したが、対戦成績自体は、テンペラー星人が二勝で勝ち越しているのだ。そして、ヒッポリト・タールが二度とウルトラ戦士には通用しないのと同様、テンペラー星人にも二度とこのような奇襲攻撃は成功しないはずであろう。
・二人めのテンペラー星人
テンペラー星人の本当の計画が始まる。二人めのテンペラー星人が現われても、あいかわらず、ウルトラ兄弟を探して、街を壊しまくっている訳だが、彼らは人間に化けたウルトラ一族を見破ってしまう特殊光線も持っていた。手始めに、タロウの人間体を発見したテンペラーは、彼(東光太郎)をあっさり捕まえてしまい、それをおとりに使って、残りのウルトラ兄弟をおびきだそうとする。本来のウルトラ兄弟対策の原則は「捕まえた時点で殺すべし」だが、そんなルールに従う必要もないほど、テンペラー星人の基本的実力は絶大なのだ。さらには、切り札であるウルトラ兄弟必殺光線すら、この時点で、姿なきウルトラ兄弟にお披露目してしまう。ウルトラ兄弟必殺光線は、奇襲で用いる必要はないので、ずっと隠しておく必然性も無かったのだ。一人めのテンペラー星人にこの武器を使わせなかったのは、必殺光線に怯えたウルトラ兄弟がこっそりと逃げ出してしまうのではないかと逆に警戒したからなのかもしれない。
これでテンペラー星人側の武器は出揃った。ウルトラ一族を見破る光線で人間体のウルトラ兄弟を見つけたら、すかさず必殺光線を放って、抹殺する。仮に、ウルトラ兄弟が遠地で変身して、空を飛んで接近してきたとしても、飛行中に必殺光線を浴びせればいい。ウルトラ兄弟は、テンペラー星人の誘いにのらずに変身するのを渋ったばかりに、変身して向き合うチャンスまで奪われてしまったのである。ここまでウルトラ兄弟を追い詰めたのは、全く、テンペラー星人だけであろう。続く巨大化戦が短かった為、テンペラー星人が弱いと考える人も多いのかもしれないが、テンペラー星人はウルトラ兄弟が変身する前にこれほどまでにも苦しめているのだ。サブタイトルの「ウルトラ6兄弟最後の日!」も決して名前負けしてはいないのである。
ウルトラマンボールを使った奇襲で、ついにウルトラ兄弟はテンペラー星人の目前で変身できる好機を得るが、たとえ、そうなっても、まだテンペラー星人も負けてはいない。戦闘力の高いテンペラー星人は、人間体であろうが変身体であろうが、必殺光線を使って、いくらでもウルトラ兄弟を倒す自信があるのだ。これこそ、過去の強豪宇宙人たちには欠けていていた「根本的実力」という要素なのである。
テンペラー星人と対峙したウルトラ兄弟のうちの二人は、いきなり合体光線をテンペラー星人にお見舞いさせるが、テンペラーは光線をあっさりと吸収してしまう。ウルトラマン二人掛かりの光線を浴びても、涼しい顔をしているなんて、とんでもない化け物なのだ。しかも、光線を出した後の一瞬の動作の鈍りを見逃さず、必殺光線をお返しする。どうも、この時の必殺光線は照準が外れたみたいなのだが、それでもウルトラ兄弟たちは大ダメージを受けている様子である。
このあと、戦いは短期決戦となる。正確には、長期戦になると、さすがのウルトラ兄弟でも勝ち目が無くなったかもしれないのである。これ以上、必殺光線を浴びる前に、テンペラー星人を倒さねばならなかったのだ。これが、最後のテンペラー星人戦が妙に短かった真相である。そして、これほどまでにウルトラ兄弟を圧倒していたはずのテンペラー星人が、ついにウルトラ兄弟に勝てなかったのは、本エピソードのテーマである「チームワーク」にしてやられたからに他ならない。
テンペラー星人に破壊光線が効かないと悟ったウルトラ兄弟は、まず金縛り光線に変更して、一時的にテンペラー星人の攻撃を封じてしまう。その間に、二人の兄弟がテンペラー星人に接近し、両手を広げさせる。テンペラー星人の数少ない弱点の一つは、多様な武器が一堂に詰まった両手だった。一瞬をついて、タロウがスライス光線でテンペラー星人の両手の柔らかい関節部を切り裂いた。両手を切り落とされたテンペラー星人は、まさに手も足も出なくなってしまった。しかし、この程度では、まだテンペラー星人の強靱な肉体は滅ぼし尽くせないのだ。ウルトラ兄弟全員でテンペラー星人を持ち上げ、ウルトラスピンをお見舞いさせる。テンペラー星人も動物的本能である「目を回す」事は、本編内ですでに確証済みだった。目を回して、耐久力や集中力が落ちているテンペラー星人を空へと放り投げる。そこで、光線を浴びせる事で、ようやくテンペラー星人を完全に葬り去る事ができたのである。まさに、ウルトラ兄弟全員が協力して、はじめて倒せる相手だったのだ。わずかでも手順が遅れれば、ウルトラ兄弟の方が全滅してたかもしれないというのも、決して過言ではないのである。
余談だが、タロウが最強の必殺技ウルトラダイナマイトを公開したのは、このテンペラー星人戦に続くカタン星人戦においてだった。もしかすると、タロウは再び攻めてくるかもしれないテンペラー星人に警戒して、この究極の技を編み出したのかもしれないのである。
・劇場版メビウスのテンペラー星人
四半世紀の時を経て、テンペラー星人が再び地球に戻ってきた。この時は、地球征服を狙う宇宙人連合の一員としてであった。しかし、見たところ、仲間の宇宙人たちがUキラーザウルスの復活を重要目的に掲げている一方で、テンペラー星人だけは、その計画には何の興味も示していない。どうやら、この宇宙人連合は、最初はナックル、ガッツ、ザラブだけで結成され、その時点から、真の目的はUキラーザウルスの復活だったのだが、地球侵略に向かうと聞いて、後からテンペラー星人も強引に仲間に加わったかのような雰囲気である。テンペラー星人の実力は他の宇宙人たちも承知だし、ヘタに逆らえないので、やむを得ずメンバーに混ぜてやったのだろう。しかし、横柄な暴君であるテンペラー星人は、相変わらずチームワークの大切さも分からず、一人で真っ先にメビウス退治に飛び出してしまうのである。
「ウルトラマンメビウス」に登場した宇宙人連合とは、いわばジュニア世代とも言うべき存在だった。メビウスがウルトラ警備隊のルーキーだったように、彼らもまた、侵略宇宙人たちの中から選りすぐられた期待の選抜メンバーだったのだ。
いずれも先代を上回る戦闘能力を身に付けていた。ザラブ星人は光線を放てるようになっていたし、ナックル星人は銀河連邦の盟主を名乗るに相応しく、そうとうに攻撃力がアップしている。身を守る体毛が退化して無くなっていたところを見ると、かなり鍛練を重ねて、身体を鍛え上げたのだろう。まさに先代の失敗を教訓に、欠点の克服を目指したものと思われる。ガッツ星人は、目立った能力的変化は見られなかったが、代わりに、ナックル星人の配下に身に置く事で、予期せぬ反撃を受けてもパニックに陥らないようにしていた。
さて、それでは、テンペラー星人はどのような能力アップを果たしていたのだろうか。華麗に空を飛ぶ姿が印象に残るが、それはあくまで付加された新能力の一つに過ぎない。テンペラー星人もまた、先代の失敗を活かして、大胆なマイナーチェンジがなされていたのだ。先代と比べ、非常にスマートなスタイルをしていたが、それこそがテンペラー星人の変質した部分で、先代の弱点はその動作の鈍さだと判断した彼らは、素早く立ち回れるニュータイプの同族を誕生させたのだ。いわば、従来のテンペラー星人がヘビー級のパワータイプだとするならば、メビウスに挑んだ新型のテンペラー星人はスピード重視のスカイタイプだった事になる。その事は、対メビウス戦序盤の格闘を見ても分かる。俊足のメビウス相手の殴り合いも、それほど遅れはとっていない。あのまま接近戦を続けていれば、タフさにおいて、やがてはメビウスだって圧倒できてたかもしれないのだ。
しかし、その一方で、身体のカスタム化は大きな代償も払っていたようである。先代と比べると、耐久力も破壊力もだいぶ劣っていたように感じられるのだ。先代はずっしりした体格を持ち、それゆえの耐久力と破壊力だった訳だから、この点は仕方がないのかも知れない。そして、この程度のパワーダウンなら戦闘に影響はないと踏んでたのかもしれないが、その事が結局、この新たなテンペラー星人の命取りにつながったのである。
接近戦では不利だと考えたメビウスは飛行して逃走するが、飛べるようになったテンペラー星人もここぞとばかりに後を追いかける。だが、これこそがメビウスの罠だったのだ。
海上へと舞台を移し、ある程度の距離を置いた二人は、光線勝負となる。メビウスが下の方に陣取ったので、テンペラー星人の方は上空から狙う形となった。メビウスが光線を放ちそうな構えをとったので、テンペラー星人も先を越されまいと急いで必殺光線を発射する。(スカイタイプのテンペラー星人だったからこそできた、光線早撃ち勝負だ。先代のテンペラー星人は、光線の撃ち合いでは、明らかに遅れをとっている)先代よりは威力は落ちていたかもしれないが、それでも、この光線が命中すれば、メビウスだってオダブツのはずだった。ところが、ここでメビウスはフェイントをかけたのである。メビウスは、光線を出すふりをして、バリヤを張ったのだ。テンペラー星人の満身を込めた必殺光線はこれですっかりシャットアウトされてしまった。そして、メビウスは、テンペラー星人目がけて、すかさず光線を叩き付けた。さしものスカイタイプのテンペラー星人でも、全力の光線を出した後の隙ができた状態だったので、その直撃をよける事はできなかった。
先代のようなパワータイプのテンペラー星人ならば、強力な必殺光線でメビウスのバリヤも粉砕できたかもしれないし、あるいはメビウス一人の光線ぐらいならばびくともしなかったのかもしれない。しかし、このスカイタイプのテンペラー星人では、僅かにメビウスに及ばなかったのである。
さらに、運が悪い事に、光線の直撃を受けた場所が空中だった。本来、テンペラー星人は浴びた光線を足の先から地面へ放流してしまう事で無力化していたのだ。空中でメビウスの光線の直撃を受けてしまったテンペラー星人は、耐久力が低かった事も災いして、その攻撃に耐えきれず、哀れな最後を遂げてしまったのだった。
メビウスは、自分の先輩であるウルトラ兄弟たちが、テンペラー星人を空に飛ばしてから、光線で爆破した事を知っていたのである。そして、テンペラー星人の方はまだまだウルトラ戦士の事が研究不足だったのであった。
こうして、自分より格下の宇宙人たちにさえ「口ほどにもない」と見下され、一族復興のチャンスを逃したテンペラー星人は、親愛なる皇帝エンペラ星人にも目をかけてもらう事もなく、再びウルトラ宇宙史の敗者の闇へと姿を消してゆくのである。