アニメ版「みゆき」を大いに語ろう

 あだち充・原作の青春マンガ「みゆき」は、実は、SFと深く通じる部分のあるラブコメディである。主人公の男子高校生・若松真人は、美しく愛くるしい妹のみゆきに恋心を抱いてしまうのだが、相手が妹である以上、二人の恋愛はそれ以上先には進まないし、肉体関係のないピュアな状態のままで二人の交流は展開してゆく。これは、SFものによくある、ヒロインが宇宙人やらアンドロイドやら、魔法界の住人などの非人間で、魅力的であっても、人間的に愛しあう事まではできないと言う設定によく似ている。だから、私のような特撮オンリーの人間でも、「みゆき」の内容は楽しめるし、真人くんと同じ視線で妹・みゆきの事を愛せるのである。
 実際には、「みゆき」には、真人のクラスメートの鹿島みゆきと言う、もう一人のヒロインも登場するのだが、原作マンガの各話の扉絵はいつも妹・みゆきのイラストばかりであり、メインヒロインが若松みゆきであった事は、その事実からだけでも明白だと言える。
 しかし、テレビ放送されたアニメ「みゆき」では、タイトルである「みゆき」を二人とも同格に扱った方がアピール度が強いだろうと判断されたのか、原作マンガよりも鹿島みゆきの露出度、活躍するシーンが増え、オープニングタイトルでも二人のみゆきは完全に対等に扱われている。愛読者の中には鹿島みゆきファンも多い事を考えれば、この処置は実に正解だったと思われる。それ以上に、鹿島みゆきをクローズアップした事で、「みゆき」ワールドは、さらに奥の深いものとなり、アニメ版は原作以上に楽しい作品に仕上がったのではないかと、私なぞは考えているのである。
 もちろん、カチカチの原作派の人以外の目から見ても、アニメ版の欠点はいろいろと思い浮かぶかもしれない。たとえば、原作マンガ完結前にアニメ放送の方が終了したので、アニメ版は原作「みゆき」の最終回まで描かれていない。いわば、未完結な状態なのである。また、話題性を狙ったのか、若松みゆきの声は当時売り出し中のアイドル歌手・荻野目洋子が担当しており、これがあまり上手だとは言えなかったりする。(笑)さらに、私も、今回、本特集を執筆するにあたり、アニメ版「みゆき」を丹念に全話見返して気が付いたのだが、回によって、キャラクターたちのデザインが大幅に違ったりしている。やっつけ仕事のセル画の手抜きが原因だというよりも、どうも、作画監督の設定画の時点で、すでにデザインが違っているみたいなのだ。
 あばたもえくぼと言いましょうか、これらの問題点を私なりに弁解させていただくと、たとえば、全話完結しなかったのは、「サザエさん」や「ドラえもん」の最終回エピソードが永遠に描かれそうにないのと同じで、「みゆき」のようなほのぼのコメディだったら、ヘタに明白な最終回があるよりも、「番組が終わっても、彼らの日常はこれからも続く」と言う余韻のある終り方が相応しかったのではないか、と言う見方もできる。実際、原作マンガとアニメの「みゆき」は、全くの別次元の話と言うほど内容が離れている訳でもなく、原作マンガの各エピソードをより詳しく描いたのがアニメ版だと考えたり、アニメ版の続きのつもりで原作マンガの未アニメ化部分を読んでみても、ほとんど支障はないのである。前述した通り、アニメ版は、鹿島みゆきの出番も多く、なおかつ、若松みゆきやその他のキャラクターたちの原作にない見せ場も増えており、ファンにとってはけっこう侮れない内容の濃さを持っているのである。ちなみに、原作の無いオリジナルエピソードが5話存在するのだが、そのうちの二つは鹿島みゆきがメインだし、別の一本は、なんと、村木ネタとなっている。こんな感じで、アニメ版は、どうしても若松みゆきばかりに焦点が集中している原作を巧みに拡散してみせているのだ。
 荻野目洋子のアフレコの件は、確かに、最初期は、あまり”可愛い妹”を感じさせなかったのであるが、中期以降は、代役を使っているのではないかと思わせるほどの大化けを遂げている。むしろ、聞き慣れてくると、けっこう適役だったかなと思えてくる部分もあり、実は、若松みゆきの声のイメージはアニメの荻野目洋子のものがすっかり結びついてしまった人も多いのではなかろうか。原作の若松みゆきは、本来、やんちゃで乱暴なキャラクターなのだが、アニメの若松みゆきの場合は、荻野目洋子の表現力の限界で、それほど勢いを感じさせない。その事がむしろ、若松みゆきを適度におとなしく、お茶目っぽい少女に見せてしまい、それゆえに、アニメ版独特の若松みゆきの可愛さが堪能できる訳なのである。
 作画監督によって、キャラクターデザインが変わり過ぎると言うのは、かなり問題が多い気もしなくはないが、たとえば、映画のシリーズでも、主役俳優が変われば、キャラクターイメージは変わらざるを得ないものである。テレビドラマのコミカライズにしても、担当する漫画家が異なれば、当然、絵柄も違うものになってくる。「みゆき」は、基本的に、1話完結形式の青春コメディであり、作画監督たちが、それぞれ、自分たちの「みゆき」を表現したかったのではないだろうか。「みゆき」は、皆の思いで独自解釈が許された青春ものの媒体なのであり、それぞれがそれぞれの作画監督たちの「作品」なのである。そのように考えてみたら、あまりに変わり過ぎるキャラクターデザインも納得して見てやる事ができなくはなかろうか。(かなり苦しい妥協ではあるが)
 アニメの「みゆき」には、もう一つ、注目すべき要素があって、二人のみゆきは大変なオシャレである。登校中の服装はもちろんセーラー服なのだが、普段着は毎回、さまざまなファッションを披露してくれる。1話内で、外出着、室内着などを数回、着替えてみせるほどだ。若い女の子にしてみれば、それが当たり前なのかもしれないが、手抜きの為、一人のキャラに常に同じ服しか着せないようなアニメが多い事を考えると、非常に印象的である。「みゆき」は、二人の少女の輝かしい日々を描いた物語であり、彼女たちが楽しく着替えると言うのは、いわば当然の話なのだ。と言う訳で、「みゆき」には、彼女たちの愛らしい服装姿がたいへん多く、他の私の特集ページの「怪獣図鑑」にあたる企画として、本特集の画像紹介ページでは「みゆき」のファッションカタログを掲載する事にしたい。(笑)
 と、まあ、アニメの「みゆき」の特徴をざっと語らせてもらったが、その魅力は概括だけ読んで分かるものではなく、原作マンガと細かく比較していく必要もある。アニメなぞ、しょせん色物だと頭っから嫌っている人もいるかもしれないが、できれば、ぜひ本編を観賞してみる事をお勧めする次第である。

 

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